2018年12月

リターンロスブリッジ その3

みなさん今晩は。本当に寒くなりました。
ここのところ毎日のように飲み会があり疲れが溜まってきています。誘われた飲み会はなるべく断らないようにしているのですが、12月は毎年週5日、日によっては前半戦、後半戦のように異なる忘年会を梯子することも。お誘いいただけるのは嬉しいのですが、お酒が好きなのでついつい飲んでしまいます。

さて前回の続き、リターンロスブリッジの制作です。前回はケースを作成したので今回は中身を入れて、計測してみます。回路は「リターンロスブリッジ その1」で紹介したものと基本同じです。違いは、フェライトビーズも使用しているところです。
使用した部品は下記の通りです。

抵抗 100Ω
秋月電子通商で以前購入した抵抗アッテネータの100Ω抵抗を並列にして50Ωにしています。チップ抵抗も高周波用のnon-inductive抵抗もあるのですが、今回は試作ということでこれを使用しました。
「チップ抵抗アッテネータ 10dB 0.1W」
http://akizukidenshi.com/catalog/g/gP-01813/

フェライトコア  FT37-43 (Amidon)
フェライトビーズ FB43-101 (Amidon)
同軸ケーブル
   50Ω AWG34 (RF-MF509) 

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一部配線に1mm径の銅パイプを使用しています。その上で、配線に銅箔をまくことで高周波対策を施しています。銅箔の巻き方でかなり特性が変わります。下記は調整中のものなのですが、1.4GHzあたりで共振点が出てしまいなかなかフラットになりません。
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下記が最終的な特性です。この構成ではこれが限界でしょう。1.5GHz SPANで見ています。(緑のライン。他のラインは自作終端抵抗を使用したもの)
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ちなみに薄い青のラインは自作50Ω終端で測定した結果です。50Ω終端は、BNCプラグに下記ようなピンに100Ω抵抗を並列で2つ半田付けしたものを嵌め込んで作成してみました。結果はDC~900MHzくらいまでは使用できそうな感じです。やはり、non-inductiveの0603サイズ位で誤差0.5%程度のチップ抵抗100Ω並列で使用するのが良いのかもしれません。チップ抵抗は小さければ小さいほど高周波特性が良いそうです。DCから900MHzあたりまでは-40dB。趣味で作成する機器には十分です。1.2GHzのアンテナ調整にも使用できるものが欲しいですが、それはまたこんど調整したいと思います。
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私が使用している終端抵抗はスタック電子のT1301です。Keysightの終端抵抗が欲しいのですが、仕事ではないので、数千円のもので我慢します。そもそも趣味でスペクトラムアナライザを購入するのもどうかと思いますが、これはあるのと無いのとでは出来ることが全然違います。最近はデジシロ、スペアナ共に必須計測器であることを実感しています。みなさんも、冬のボーナス如何でしょうか。

ついでに、在庫えいたRF microwaveが販売しているアルミ削り出しの箱(SP-98)に同様回路を詰め込んみました。この箱は最初からSMAコネクタ用の穴が開いていおり、様々な用途につかえます。

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同様に詰め込んでみたところです。
銅箔テープを下に貼っています。

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良い特性を得るポイントは、DUTコネクタ付近に銅箔テープを張り、可能な限り他の部分から分離することです。この銅箔の微妙な位置、貼り方で共振点が出たり、フラットにできたりと調整のポイントになります。
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概ね40dBm以上取れているので使い物にはなりそうです。

これが今年最後の投稿ですね。みなさん、良いお年をお迎えください。

リターンロスブリッジ その2

みなさん、今晩は。かなり寒くなってきましたね。
非常に久しぶりに毎週ブログを書いている気がする。どうしたんだろうと冷静に考えてみると、週末も仕事の積み残しを減らすことに費やされている時はブログを書いておらず、余裕があるときにブログを書いているのかもしれない。前々回は、仕事で文章を書くことが多いから、帰宅してからは書く気力が無いと書きましたが、訂正します。単純に時間がなく、疲れ果てているだけかもしれません。

リターンロスブリッジを作成する上で重要なのがケースのようです。特に高周波において外界ノイズが性能に大きく影響を与えるようです。色々な人のブログを見てみると、多くはキャビティ構造のケースを使用しています。今回作成するリターンロスブリッジがうまく行けば、安い簡易的なケースを試してみようと思いますが、まずは下記のようなアルミ押し出しケースを使用します。ちなみに、タカチのケースではありません。ま、似たようなケースです。秋葉原のジャンク屋で入手しました。

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中身もタカチのアルミ押し出しケースにそっくりですが、違います。タカチのケースにある刻印もありません。

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このケースは以前秋葉原で安く購入したものなのですが、表面がザラザラであまり綺麗ではありません。ということで、バフ掛けする時に使用するフェルトとアルミ磨き用のペーストで磨きました。このフェルトは電動ドリル等に取り付けて使用でき、且つ小さい(直径50mm)ので、デスクで作業ができてしまいます。


これで磨いた結果がこちらです。写真ではわかりづらいかもしれませんが、かなりピカピカになります。気を付けなければいけないのは、磨いているとアルミ表面の微細な突起が削られて黒くなったペーストです。それが手に付着するとなかなか落ちません。必ず使い捨て手袋などを使用して磨きます。

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磨きおえたケースはリーマーでプラグのメインの穴を開け、ドリルとタップでネジ穴を開けます。アルミの厚さがある程度ある場合は、開けた穴をナットで止めるのではなく、タップでケースに直接のネジ止めできるようにすると見た目も良くなります。
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ケース加工をする人はテーパーリーマ、タップは持っていると良いかと思います。

これはHOZANのテーパリーマ。各サイズを持っていると便利です。最初に5~6mmの金属用ドリルで穴をあけ、テーパリーマで穴を目的の大きさまで広げます。タップは、アルミ板等に直接ねじ止めできるように、穴にネジ山をつけるための工具です。通常は、タップとタップ用のドリルがセットになっています。例えばM3用のネジ穴はM3より細めのネジで穴を開け、タップでネジ山を切ります。薄いアルミの場合は強度の関係から、ロールタップの使用をお勧めします。ロールタップとは、通常のスパイラルタップ(削るタイプ)と異なり、塑性でねじ山を盛り上げて加工します。その為、スパイラルタップで加工したネジ穴よりも強度があります。その分、作業には対象の十分な固定と力が必要です。

こちらが穴あけ加工後のケースです。
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まあ、それなりにできている感じでしょうか。
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そして、こちらが開けた穴にパネル用のBNCプラグを取付後です。
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左側のコネクタが曲がってついているように見えますが、これは安物カメラのレンズの歪みで実際はまっすぐに付いてます!この後はいよいよ中身の取り付けと測定です。

リターンロスブリッジ その1

みんさん今晩は。ようやく冬らしい天気になってきましたね。

私は夏が嫌いで冬が好き。特に12月をこよなく愛する人間なので今が1年の中で今が一番幸せです。COP24など温暖化対策に関係するニュースが増えてきていますが、本当に危機的な状況なのだと思います。物理・化学現象の多くは、反応が一度本格化すると一気に加速します。地球環境がそうでない保証はどこにもありません。子、孫の世代に今何ができるのかを真剣に考えるべきなのでしょう。

などと真面目な話はさておき。スペクトラムアナライザを購入したので、さっそくリターンロスブリッジ(RLB)の作成をしてみました。リターンロスブリッジはCQ出版社の『改訂新版 定本 トロイダル・コア活用百科 —トロイダル・コイルの理論・製作と応用回路 』 第10章に書かれている内容を参考に作成しました。


この書籍に記載されている回路図にはアッテネーターが含まれていますが、アッテネーターは信号源によって変わりますので、ここでは省きます。(恐らく市販のリターンロスブリッジにもアッテネーターは内臓されていないのではないでしょうか。)私が作成したRLBの回路図は下記になります。自作されている方々の多くがこれと同様と思います。
回路図

今日はここまで準備をしたので、次回はケースを作成したいと思います。

スペクトラムアナライザ

みなさん今晩は。ここのところ四半期に一度のペースでしかブログを書いていない気がします。本業では頼まれて雑誌に寄稿したり、講演資料作成したり、その他色々と文章を書くことが多くあります。そのせいか、最近は帰宅すると文字を書く気力が残っていなかったりするのです。文字を書く気力はなくても、何かを作る気力やネットショッピングに気力は残っていたりするのが困りものです。

なぜ困るかというと。作る予定の物、材料(部品など)が増え、片付け、収納が後回しになり、書斎が雑然としていく。雑然としてくると、そのこと自体が何となくストレスになってくる。悪循環です。気分転換にまた何かを買い物してしまう。書いて思いましたが、ちょっとした病苦ですね。治さなくては。

それで最近勢いで幾つか購入したものの1つがこれ。
OWONのスペクトラムアナライザ XSA1015TG。勢いで買うような物ではありませんが、ついつい。家族には怖くて値段言えませんが、20万は超えていません。

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(スクリーンは自分の姿が映りこんでしまったので、ぼかしてます。汗)

少し前までこのスペックのトラッキングジェネレーター付きスペクトラムアナライザを20万以下で購入するなど夢もまた夢。これまで出来なかった事が色々とできそうです。
スペックは下記のような感じです。使用感、評価結果については改めてこのブログにポストしようかと思いますが、概ねスペック通りの性能が出ています。素晴らしいの一言です。

周波数仕様
モデル XSA1015TG
周波数
レンジ 9kHz-1.5 GHz
分解能 1Hz
周波数間隔
レンジ 0 Hz,100 Hz から装置の最大周波数
精度 ± 間隔/(掃引点 -1)
内部基準
基準周波数 10.000000 MHz
温度安定度 <2.5ppm (15℃ ~35℃)
経年劣化率 <1ppm/年
バンド幅
バンド幅分解能 (-3 dB) 10Hz ~500kHz(in 1 ~10 シーケンス), 1MHz,3MHz
ビデオバンド幅 (-3 dB) 10Hz ~3MHz
振幅仕様
表示平均雑音レベル(DANL)
入力減衰率 0 dB,1Hz バンド幅分解能  
プリアンプ オフ 1 MHz~10 MHz -130dBm(指名)
10 MHz~1GHz -130dBm(指名)
1GHz~1.5 GHz -128 dBm( 指名)
プリアンプオン 1 MHz~10 MHz -150dBm(指名)
10 MHz~1GHz -150dBm(指名)
1GHz~1.5 GHz -148 dBm( 指名)
位相ノイズ
20 ℃ ~30 ℃,fc=1 GHz  
位相ノイズ <-85 dBc/Hz @10 kHz オフセット
<-100 dBc/Hz @100 kHz オフセット
<-110 dBc/Hz @1 MHz オフセット
レベル表示レンジ
対数スケール軸 1dB ~255dB
線形スケール軸 0 ~基準レベル
レベル単位 dBm,dBuW,dBpW,dBmV,dBuV, W,V
201~1001
トレース数 5
検出 正ピーク、負ピーク、サンプル、ノーマル, RMS
トレース機能 クリアーライト, 最大ホールド, 最小ホールド, ビュー, ブランク, 平均
精度
入力減衰スイッチ不確実性 20℃ ~30℃, fc=50 MHz,プリアンプオフ, 20dB RF 減衰,入植信号 0~39 dB 
±0.5 dB
絶対振幅不確実性 20℃ ~30℃, fc=50 MHz,RBW=1 kHz,VBW=1 kHz,ピーク検出, 20 dB RF 減衰率, 
プリアンプオフ ±0.4 dB,入力信号= -20dBm 
プリアンプオン ±0.5 dB, 入力信号= -40dBm
不確実性 入力信号レンジ 0dbm~-50dbm
±1.5 dB
VSWR 入力10 dB RF 減衰,1 MHz~1.5GHz
<1.5,公称
トラッキング発生器
出力周波数レンジ 100 kHz~1.5 GHz
出力電力レベルレンジ -30 dBm~0 dBm ,
出力電力レベル分解能 1DB
出力平坦度 +/-3 dB
最大安全反連レベル 平均総合電力:30 dBm,DC : ±50 VDC
入力と出力
前面パネル RF 入力コネクタ 50 Ω,N-type メス
前面パネルトラック発生器出力 50 Ω,N-type メス
10 M 基準入力 50 Ω,N-type メス
通信ポート USB ホスト, USB デバイス, LAN, イヤホンポート, VGA
一般技術仕様
画面 TFT LCD,10.4 インチ
重量 5.0 kg
寸法(W x H x D)  321 x 221 x 115 (mm)

ただ、スペクトラムアナライザを入手してしまうと作りたいもの、欲しいものが増えてしまいます。例えば、周波数特性の良い50Ω終端。出来れば、DCから1.5GHzまでフラットな特性のものが欲しい。HP 909Aはなかなか入手できなさそう。いまだとKeysightでしょうか。そして、リターンロスブリッジを作成したくなります。アナログ回路の作成ではあると便利です。加えて、ちゃんとした(?)DCカットフィルターも欲しくなります。オシロで電源のノイズを調べる時はコンデンサを間にいれていますが、やはり正しくノイズを測定する為には特性の良いDCカットフィルターが欲しくなってしまいます。
スペアナを購入して一段落どころか、欲しいものが増えてしまっている。この年で物を増やしてどうかと思いますが、家族はきっと諦めているのでしょう。

ところで、私が購入したXSA1015TGには、本来オプションのEMIフィルターが標準で追加されていました。ピーク検出などノイズの確認には便利そうです。(まだ使っていません。)これらの機能についても、今後紹介していこうかと思います。